何ヵ月に一度だったでしょうか、大きな風呂敷包みを背負って、見慣れたおじさんがやって来ました。富山の薬屋さんです。子ども達は、おじさんの顔を見かけると、なぜかそわそわとしだしたものでした。富山の薬屋さんとは、各家庭の薬箱に常備薬を置いてゆき、しばらくして再訪問し、服用した薬の分の代金を徴収し、減った分の薬を補給するというシステムの薬屋さんでした。おじさんが、大きな行李(こうり)の中から薬を取り出し、薬箱に詰め終わると、やおら、子ども達が待ちわびる物を、行李の中から取り出します。薄ぺらい紙片です。そして、その紙片に息を吹き込むと立派な遊び道具が誕生します。紙風船です。確か青い色と、赤い色のインクで薬の広告が印刷されていたと思いますが、そんなものにも当時の子ども達は、夢中になって遊んだものでした。