私が生まれ育った所沢は、「となりのトトロ」のモデルになった所としてご存知の方も多いと思いますが、私もちょうどその「トトロ」を描いたその時代にあのモデルとなった田んぼで、友達と蛙やザリガニや小魚を獲ったりしながら遊んでいたものでした。映画に出てくるあの田んぼの風景は、記憶にある風景そのものでした。左の絵の橋は、所沢市街とその田んぼ(大谷田んぼ)や八国山(映画では、七国山)を結ぶ途中にありました。まだ木の橋で、欄干もなく渡るとトントンと音がしたので、だれかれとなく「トントン橋」と呼んで慕われました。その橋の上を当時人気の車「ミゼット」が走っています。川ではのどかに釣り糸をたれた人と、子どもが水遊びをしています。周りの畑には、お蚕(かいこ)に食べさせる桑の木が植えられています。もしかして、この橋の上で「サツキ」や「メイ」とすれ違っていたかもしれません。そしてときおり聞いた風のうなりは、トトロの<いびき>だったのかもしれません。現在、その橋は、コンクリートで固められ、田んぼは、住宅地となり、わずかに八国山が当時をしのばせてくれます。