今は、合理主義や諸事情により昔からの建前(上棟式)の儀式がすっかり影を潜めてしまいました。昔の建前といえば、まず棟上(むねあげ)が終わると、施主さんが屋根からお菓子やおもち・半紙に包んだ小銭などをまき、子ども達がそれを争うようにしてひろったものです。それが終わると、職人さんに施主さんがお酒を振舞いました。その頃の職人さんと言えば、お酒を飲むと大きな声で歌を歌ったり、荒々しい男になったりして、子ども達は、遠めにその光景を眺めていたものです。そしてその頃にはまだ、背中に彫り物をした職人さんを見かたものです。江戸時代からの慣習として、とび職人などは、背中に彫り物をするということがあったようですが歳のいった職人さんなどに、立派な彫り物をしている人を見かけました。話はそれますが、お祭りとなるとそうした彫り物をした人が、注目を集めたものです。唯一、晴れて人前にその背中の雄姿(?)を見せられる機会だったのでしょう。子どもにとってそういう人達は、こわそうという反面、男としてのたくましさを感じたものでした。今では、職人さんもマイカーで現場に行く時代になり、昔ならがらの建前は、みられなくなりました。