音の悪いスピーカーから、のどかな音楽を流しながら、ロバがパンを積んだ車を牽きながらやって来ました。「ロバのパン屋」さんです。ただ名称が「ロバのパン屋」というだけで、実際ロバであったのか定かではありません。記憶では、ポニーであったように思います。いずれにしても、ロバにしろポニーにせよそうした動物が道を闊歩(かっぽ)できる時代でした。肝心のそのパンの味がどのようの物であったのか確かな記憶がありませんが、玄米パンで甘みのある物であったように思います。今の菓子パンのはしりだったのでしょう。その「ロバのパン屋」さんで忘れもしない出来事があります。ある日いつものようにやって来たのですが、止めた場所が悪く八百屋さんの前であったため、店先の樽に入った売り物の「もやし」をむしゃむしゃとロバ君が食べてしまったのです。激怒した八百屋のおじさんと平謝りのパン屋のおじさんの姿が今でも目に浮かびます。