肥溜め(こえだめ)

昭和30年代頃まで、私の住んでいた地域の畑には、あちらこちらに肥溜め(こえだめ、もしくは、こいだめ)がありました。肥溜めとは、いわゆるボットン便所時代、各家庭の糞尿は、回収されると畑の肥料として再利用するために、一時的に畑に溜めておく必要がありました。その溜池を肥溜めと呼んでいました。そして、その肥(こえ)を畑に蒔いたときなどは、あたりに強烈な匂いがたちこめたものです。尾籠(びろう)な話で恐縮ですが、当時はまだトイレットペーパーなど無く新聞紙などで代用していたので、肥を撒いた後には、干からびてよれよれになった新聞紙が畑に散らばっていたり、どうかすると使用済みの「いちじく浣腸」の容器などまでもが落ちていました。私など、何ゆえに糞尿が肥料になるのか今もってわかりませんが、その農作物を食していたと思うとやはり信じられない気持ちになります。また、人糞は農家の人にとっても衛生上良くなく、草むしりなどをすると、手や指が皮膚病におかされたそうで、そのために繭玉を切って指サック変わりしたところもあったそうです。
その肥溜めに、子ども達が遊びに夢中になり、はまってしまったという話をよく聞いたものでした。そしてそのような子どもは、学校を卒業するまでからかわれ、まさに最後まで汚点が付いてまわりました。

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