半鐘の思い出

時に夜の静寂を破るように、遠くから「ジャーン・ジャーン」と鐘をたたく音が聞こえる時がありました。それは近くで火災が発生したことを知らせる、火の見櫓(ひのみやぐら)の半鐘の音でした。今のように、高層の建築物があまり無い頃、見晴らしの良いところに、十数メートルのはしご状の櫓(やぐら)に、鐘をつけた火の見櫓が街のあちこちにみられたものでした。近所で火災が発生するや、その火の見櫓に地元の消防団の人が上り、鐘を鳴らして近隣の人に火災を知らせたのです。火災現場が近い時は、間隔を短く乱打するように、現場が離れている時は、間隔をあけてゆっくりとというように、その打ち方によって色々の決まりごとがあったようです。もちろん昼間の火災でも、半鐘は鳴らしましたが、何と言っても夜の静けさの中に響き渡る鐘の音は、人々を緊張させ、不安にさせるものでした。

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